ストッカーの上の小さなスペースで
これ、どれだけいるんだよ!?
あと、25個ほど、、、
かしてみろ!
サッ、、スーッ、、、
お前のは、ここが小さいから変なんだよ。
いいか、大きな桃と、小さな桃を描くように、、、で、蝶々の触覚は、細くて、繊細な感じだな、、、だから、、、これくらい、、、
なっ!!やってみろ!
はいっ!!
人参の蝶を切り込んだことのある人なら、わかることなんですが、最初から、上手にいきません。、、、
与えられるスペースは、小さな冷凍ストッカーの上の不安定な場所に、小さなまな板を置いて、作業します。
もちろん、集中して何かをできる余裕もなく、
ここぞと言うときほど、
だいすけー、倉庫から、リードペーパーとってきて〜、
はい!!
戻ってくると、下に落ちたきりかけの蝶が、、、
くそっ!!って心で拳を打ちつけるほど、歯がゆい思いをしました。
あっ、ごめん! 離れるときは、なおしていけよ!!
はい!すみません!
といいながら、
てめーこそ、通るときは、周りに注意して通れよ、と思ったものでした。
よし!できた!!
40個ほど作り終えて、帰り、翌日の婚礼の準備中に、アクシデントは起こります。
あっ!!
水につけてた蝶が絡まって、硬くなり取れない。少しずつ揺らしながら、外してたとき、、、、
わっ、、、
ガシャーン、、、
落下、、、
ポキポキに折れて、ただの人参のクズになってしまい、顔面蒼白、、、
うぃ〜、、、あれ!?お前これ、いまから使うやつだろ?!
副料理長のKさん到着。
はい!すみません!!
とは言ったものの、どうしたらいいか、、、
しかしKさんは、慌てません。
人参あるのか?
はい!厨房にはあります。
取ってこい!
メイン厨房から、中華厨房までは、少し距離がありますが、ダッシュ!!
厨房に着くと、内線で何か話してる先輩の、Sさんが、こっちを見て、ちょっと待て!とジェスチャーしてます。
内線を切るとSさんから、
ブロッコリーの茎のとこもってこいって!
わかりました!!
大介!!あと、ペティナイフは?
あっ!もっていきまーす!
俺のも貸すから、Kさんの盗んでこい!ほらっ!!
あざっす!!
厨房を後にして、ダッシュで向かいます。
すみません。Kさんの前に着くと、
うぃ〜、なんだよー、慌ててんのか?
あっいや、はいっ、、
まだ、間に合うだろ。
貸してみろ!
すごい勢いと、すごい正確さで、どんどん切り込んでいきます。
あれ!Sにブロッコリーの茎って言ったんだけど、、、
あっこれか!
お前蝶やってろ!
はいっ!
Kさんは、茎を手に取り、ペティで何か彫り始めました。
どう?!
あっけにとられて、見入る私に、
なんだよ!たまには、こんなんでもいいだろ!
と木にとまる、小さな鳥を彫っていました。
この方が、物語があるな!
そういうと、あっという間に、Kさんは、20卓分を彫り終えました。
慌てないことだよ!
常に先をよんで行動しないと!
はい!そう言い、まったく、目で盗む暇も与えませんでした。
先日、うちのスタッフが、仕込み終え、約10日かかった、フカヒレの姿を、ガッシャーンといきました。
流石に、ひと昔前なら、流血ものの怒られ方をするのでしょうが、時代が時代なので、
当時を思い出し、
慌てないことだよ!無理をしないこと!
よく確認すること!
とだけ注意しました。
ただ、そう、注意した、先輩の当時の気持ちは、初めて理解できました。
あとからしか理解できないことは、沢山あります。
いま、仕事を辞めようと思ってるという若いコックさんの話を聞くこともありますが、何事にも時間がかかります。後で、笑い話になる、仲間を沢山作ることも、仕事の一つだとおもって、頑張って欲しいなとおもいます。