はじめての賄いから、２年経たない頃の、めちゃくちゃ忙しい最中での出来事でした、、、

 

入れ替わりの激しい厨房で、何人も後輩が出来ては辞めてを繰り返していたので、２年弱たった時に、残った後輩は１人でした。

私は、その頃、包丁を使うことの多いポジションに移されて悪戦苦闘していました。

婚礼、宴会、一般レストランと、とにかく忙しい日に事件は起こりました。最初に面倒を見てくれたＮ先輩が料理長の隣で鍋を振っているときのこと、私は目の前の後輩がてんやわんやになってるのを、なんとか助けたいと思って、いや、本当はちょっとカッコつけようくらいの勢いで、自分の仕事を片付け、手伝いに入りました。

鍋を振る方達は全部で４人立ち、右から、副料理長(焼売スローの)、Hさん、料理長、そしてＮさん、なんの料理だったかははっきり覚えてないのですが、ホールスタッフが少し困った顔してやってきました。料理長すみません！そう声をかけて、何やらクレームのようです。手には料理ののった皿、料理長はＮさんを呼びめちゃくちゃ怒ってました。厨房は活気から葬式のように静まり返り、Ｎさんも熱気を浴びた体から元気が無くなりました。ちょっとカッコつけちゃろーくらいのテンションで近づいた私は、一緒にクールダウン、こりゃーそーとしとこーというテンションに、そして、鍋場に戻った料理長とＮさんでしたが、しばらくすると、お前後ろさがってろよー！料理長の声が響きました。普段、釣りの話と海物語の話しかしない料理長からは想像つかないテンションです。　副料理長も何やってんだよという表情です。そうこうして、少しだけ落ち着いてきたころ、Hさんは鍋を離れて後ろにまわりました。

次誰？と料理長が副料理長に声をかけました。

後ろに回ったHさんが私の肩に手を置きました。

その様子を見た副料理長が、林ヤレるだろ？

オドロキ！！どころか、まだ、気持ちの整理が、、、Hさんは退職して別の有名店で働く事が決まっていたため、私を推してくれてましたが、なんせまだ他の先輩がいるのに、、、

鍋に入れ！副料理長がそう言うのを、できません！とは言えません。

緊張して鍋に入ると、くるじゃないですか！炒飯のオーダーが、ニヤリと笑う副料理長、当然デビューです。

料理長の隣ですから緊張します。だからと言って何か言うわけでもなく、ただ見られるだけです。

こう言う場合は見てもらうとか、見ていただくと言うのが好ましいのですが、、、

なんとか出来た炒飯、、、

１時間ほどして、、、残って返ってきました。

料理長がその皿に近づき私を呼び、食べてみろ、ちがうだろ？と言います

はい！唇を噛む思いでした。

料理長は自信がつくまで作らないとダメ

それだけ言い残して、帰られました。

帰りに副料理長に呼ばれました。

毎日、たくさん練習したのか？　しててこんなんじゃと思い、黙ってると、してたんだろ？だから鍋に入れたんだよ、最初から上手くいくわけないよ、お客様には申し訳ないと思うなら、早く１人前になって、今日のお客様に感謝できるようにしろよ。そう言い、最後に、いつものとこ行っちゃうか？と、夜中までお酒をご馳走になり、たくさん、料理の話をしました。

デビュー戦は、負けてしまいましたが、いまでも、くっきりと覚えてます。

あの時のお客様に会ってお詫びがしたい。今はそう思います。そして、こう育ててくれた、最初の副料理長、次の副料理長、そして料理長、沢山の先輩方に感謝。

焼売の話をしながら、一品入魂を教えてくださった副料理長　ありがとうございます！

全てはいい経験です。